農業の好循環に挑戦

野菜を購入するとき、「どんな土で育てられているのか」を考える機会は、それほど多くないかもしれません。
野菜づくりに肥料は欠かせませんが、現在、日本で使用される化学肥料の原材料(鉱物)は9割以上を輸入に頼っているとされ、肥料価格は高騰しています。国際情勢による供給の不安定さも懸念される中、化学肥料への過度な依存によって土が疲弊していく問題も指摘されています。
こうした課題に向き合うため、目黒区で創業した農業ベンチャー、株式会社BG(以下BG)は、「いい土づくり」から本来の農業場持つ“人と地球の好循環”を生み出すことを掲げ、研究機関や企業と連携しながら、新しい農業モデルづくりに取り組んでいます。
循環その1 自然界の土壌生態系を再現する有機肥料の開発

BG創業者の富松俊彦さんは、「まず取り組んだのは、農家が使いやすい、いい土の原料となる有機資材の開発でした」と話します。
BGは国立研究開発法人・理化学研究所との研究に基づいて、自然由来の有機物を活用し、畑の土を改良する独自の有機発酵資材「Soil Next」を開発しました。「Soil Next」を投入した畑では微生物が活性化し、野菜が栄養を吸収しやすい環境へと整っていきます。
「自然由来の有機物は国内で調達しています。例えば、酪農が盛んな北海道では牛ふんが余剰になり、米どころではもみ殻が大量に発生します。こうした有機物を集め、農家が使いやすい有機発酵資材にして提供しています」と富松さん。
「Soil Next」で改良された畑では野菜がよく育ち、コストを抑えながら安定した収穫が見込める環境へと変わっていきます。


循環その2 数字で「見える化」し、新たな価値を生み出す
改良された畑の価値を客観的に評価するため、BGでは独自の評価指標「Agri LCA+」(※1)を開発しました。特徴的なのは、土の状態だけでなく、生物多様性の保全や気候変動への影響といった視点も取り入れている点です。これにより、畑でどのような変化が起きているのか、またどれだけ温室効果ガスの削減・吸収につながっているのかを数字として「見える化」することを可能にしました。
さらに、「見える化」した土の価値を「Next Green Credit」という環境クレジット(※2)として企業などに販売し、その販売益を生産者に還元する仕組みも整えています。BGは2026年3月に初回のクレジットを創出し、販売益を農家へ還元。農家はその収益を再び土づくりに活用するという、新たな循環が生まれています。
※1 国立研究開発法人・産業技術総合研究所と共同開発。
※2 温室効果ガスの「削減量・吸収量」をクレジット(排出権)として売買できるカーボンクレジットの仕組みに、生物多様性や水、植物資源への環境価値を付加したもの。
循環その3 いい土で育った野菜を消費者につなぐ



「いい土で育った野菜は、おいしい」。その価値を消費者に伝えるため、BGでは「Next Green Vegetables」というブランド名で、東急ストアなどを中心に野菜を販売しています。
富松さん自身が店頭に立つこともあり、その際には「いい野菜は、いい土から生まれる」というメッセージを直接伝えているそうです。
「実際に販売時にそのお話をすると『確かにそうよね』と共感してくださる方が多く、購入されたお客様からは『本当においしかった』という声もいただいています」と、手応えを感じているといいます。
いい土づくりから始まる農業の好循環は、農家を支え、土壌を健やかに改良し、おいしい野菜を生み出します。
毎日の食卓で選ぶ野菜の背景にある土や環境に目を向けてみること。それが、持続可能な農業を支える一歩につながります。
株式会社BG
2021年創業の農業ベンチャー。「土」を起点に、土づくり支援や環境評価の可視化、農産物のブランディングを通じて、持続可能な食と農業の推進に取り組んでいる
