自由が丘で蜜を集めるミツバチ

自由が丘では都市養蜂(丘ばちプロジェクト)が行われています。バラのまちとしても知られる自由が丘では、春から秋にかけて多彩な花が咲き、ミツバチたちは住宅の庭や公園、神社などを飛び回って蜜を集めて巣箱に戻ってきます。巣箱があるのは自由が丘の中心街のビルの屋上です。
2009年に「丘ばちプロジェクト」を立ち上げた経緯を、中心メンバーである自由が丘商店街振興組合の中山雄次郎さんはこう語ります。
「パリではオペラ座の屋上でミツバチを飼っていると知ったことがきっかけです。都会の真ん中で養蜂をやるというインパクトの強さに引かれました」
パリの市民は、ミツバチのために蜜源になる植物を植えるなど、街全体でミツバチと共生している印象を受けた中山さんは、街と地域の人とのつながりが深い自由が丘なら実現できるのではないかと考えたそうです。
とはいえ、針を持つ昆虫を飼うには、地域の人たちの理解を得なければ実現できません。町会などに説明に行くと、予想と違う反応が返ってきました。
「反対されるかと思いましたが、自由が丘には自然や生態系の大切さを理解している方が多く、丘ばちプロジェクトにボランティアで協力してくれる方がたくさん現れました」
産地で味が変わる蜂蜜。自由が丘ならではの香りは?

巣箱の中では女王バチはたくさんの卵を生み、働きバチたちが巣を維持します。スタッフは定期的に巣箱を開け、女王バチが元気に卵を産んでいるか、病気やダニなどの害虫が発生していないか、注意深く観察を続けます。
春から夏にかけては巣箱の中に溜まった蜜の採蜜も行います。蜜がたっぷり入った巣箱は20㎏を超えることもあり、ハチに刺されないよう全身を覆う防護服を着て作業をするのは重労働です。
収穫された蜂蜜は、その土地ならではの風味を持つと言われています。自由が丘の蜂蜜は、バラやハーブ、街路樹、住宅の庭木、公園の花など、多様な植物から集めた蜜でつくられています。そのため香りが豊かなことが特徴です。
多彩な花の蜜が含まれる百花蜜「丘ばちはちみつ」は、目黒区のふるさと納税返礼品にも登録され、自由が丘のスイーツ店などでも活用されています。



気候変動がミツバチに及ぼす影響

2025年9月11日、自由が丘周辺は記録的な豪雨に見舞われました。駅周辺では浸水被害が発生し、多くの店舗が影響を受けました。
この豪雨はミツバチたちにも深刻な被害をもたらしました。巣箱に大量の雨水が流れ込み、内部でカビや細菌が繁殖したことで、ミツバチは全滅してしまったのです。
近年は猛暑や豪雨など極端な気象現象が増えており、地球温暖化の影響は人間だけでなく、生きものたちの生存も脅かしています。
再開発が進む自由が丘でリスタートした「丘ばちプロジェクト」

今年3月、丘ばちプロジェクトは新たなミツバチを迎え入れ、活動を再開しました。現在は約20万匹のミツバチが自由が丘周辺で花々の蜜を集めています。
自由が丘駅周辺では再開発が進む一方で、自然との共生を意識したまちづくりも進められています。2026年9月に開業予定の「自由が丘ミューズスクエア」では、中山さんたちの働きかけにより、ミツバチの蜜源となり景観にも配慮した樹木が街路樹として採用されました。
中山さんは「手間のかかる植栽をあえて取り入れることで、人の関わりや温かさのある街を守りたい。ミツバチが舞う、サステナブルな街を未来へつないでいきたい」と話します。
ミツバチは花の蜜を集めながら植物の受粉を助け、生態系を支える大切な存在です。「丘ばちプロジェクト」は、都市の中で自然を育み、人と地域をつなぐ自由が丘らしい取り組みとして、サステナブルなまちづくりを支えています。
■自由が丘商店街振興組合
https://www.jiyugaoka-abc.com/
自由が丘にある12の商店街が連携して1963年に発足。現在は約1,300店舗が加盟する国内最大級の商店街組織。イベント開催や情報発信、環境・防犯活動などを通じて、魅力ある街づくりと地域活性化に取り組んでいます。
