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傘のシェアリングサービス活用で、使い捨てされる傘をゼロに

大量に消費されるビニール傘

祐天寺駅に設置されているアイカサの傘スタンド
祐天寺駅に設置されているアイカサの傘スタンド

出先で急に雨に降られたとき、ついビニール傘を買ってしまい、家にビニール傘が溜まってしまったり、使い捨てしまったりしたことはありませんか。日本で消費されるビニール傘は年間に約8千万本(※1)にもなり、日本は世界一ビニール傘を消費する国とか。ビニール傘を使い捨てすれば、製造から廃棄までにCO₂が発生するほか、ごみを増やすことになります。

 

安易にビニール傘を買わずに、急な雨でも濡れないために利用したいのが「アイカサ」です。アイカサは、駅や商業施設、オフィスビルなどに設置された傘のスタンドから、スマホ1つで傘を借りられる傘のシェアリングサービスです。すでに山手線は全ての駅に、東急東横線(目黒区内)は祐天寺駅、都立大学駅、自由が丘駅に導入されています。ある雨の日に傘を借りてみました。

 

(※1)環境へ与える傘の廃棄問題 Environmental issue of Umbrella(サレジオ工業高等専門学校 デザイン学科 価値創造研究室)

 

 アイカサを利用するには、あらかじめスマホに専用アプリをダウンロードし、支払い方法を設定しておく。傘スタンド上部にあるQRコードをスキャンすることで傘をレンタルするシステム。返却はどこの傘スタンドでもできる。傘は雨用、日傘(雨晴兼用傘)の2タイプがある。


エコで便利な傘のシェアリング

アイカサ広報の加藤薫さん。手にしているのは改良された最新モデルの傘
アイカサ広報の加藤薫さん。手にしているのは改良された最新モデルの傘

利用料金は24時間で70円、リーズナブルな上、提供される傘は作りもしっかりしていて、デザインも豊富です。広報の加藤薫さんは、アイカサは株式会社サエラ(傘の製造メーカー)との協業により、耐久性に優れた傘を提供しているのが特徴という。

「提供する傘は、市販価格で3~4千円相当のものです。長く使っていただくために、傘は骨が折れたり、生地が傷んだときに交換できる構造です。デザインは、皆さんに『この傘、使いたい!』と思っていただけるようにこだわっています」

露先は布でくるむ構造で、人に当たっても安全な構造
露先は布でくるむ構造で、人に当たっても安全な構造
先端の石突は尖らせずに、平らになっている
先端の石突は尖らせずに、平らになっている
器具なしで分解でき、傘骨1本から交換できる
器具なしで分解でき、傘骨1本から交換できる
強化プラスチックで丈夫でしなやかな傘骨
強化プラスチックで丈夫でしなやかな傘骨

廃プラスチックを傘にアップサイクル

アイカサは廃プラスチック問題にも着目し、メーカーと協働で、使用済みジップロック®を回収し傘にアップサイクル、ジップロック®のカラーとロゴをデザインした傘をシェアリングしています。

 

「使い捨て傘をゼロに」を掲げる傘のシェアリングは、企業や自治体、環境省などの賛同を集めています。賛同企業などと多くの協働プロジェクトも展開しており、プロジェクトごとに雨の日に借りるのが楽しくなるようなオリジナルデザインの傘を提供しています。

「2030年使い捨て傘ゼロ」傘シェアプロジェクトに参画した企業によるオリジナルデザインの傘。今後、順次導入予定(導入時はデザイン変更の可能性あり)
「2030年使い捨て傘ゼロ」傘シェアプロジェクトに参画した企業によるオリジナルデザインの傘。今後、順次導入予定(導入時はデザイン変更の可能性あり)

アプリにCO₂の削減量を表示

翌日、傘を返却すると、アプリの画面にアイカサの使用により削減できたCO₂の量(※2)も表示されていました。

「便利さから使い始めた人にも、環境への意識を高めることにつながるようなメッセージを入れています」(加藤さん)

傘のシェアリングが多くの人の生活の一部になれば、ビニール傘を購入する機会も減り、無駄な出費もごみも減る。雨の日をエコで快適に変える傘のシェアリングが根付く日は、そう遠くないかもしれません。

 

(※2)1回利用するとCO₂約692g削減。削減量は環境省 3R原単位の算出方法による

 

 

  ■アイカサ

2018年に傘のシェアリングを開始。現在、傘のスタンドは首都圏をはじめ、関西、愛知、岡山、福岡、佐賀、北海道など、鉄道沿線を中心に1000か所以上に設置。登録者はおよそ30万人

https://www.i-kasa.com/