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南極地域観測隊調理隊員の体験を聞いて

実践わたし流‼ 投稿者:hitokoto

「南極地域観測隊」の一員となった調理師・渡貫淳子さんの話をうかがった。南極のことを調べたり、OB会に出席して「これはおもしろい」と30歳を過ぎてから応募されたという。

2015年12月から1年4か月、越冬隊員30名の食事を2名の調理師でまかなうことが仕事で、「年に一度、船で運ぶ食材ですべてをやりくりする」のだそうだ。そのため制約は実に多く、まず、1つ目は「生野菜不足」。なんとキャベツは生で7か月間持たせ、キュウリを60カットしたこともあるという。土と種は持ち込めないため、わずかだが水耕栽培もしている。

2つ目は、「水」。雪と氷をプールに入れて塩分とごみを取り除いて作るのだが、1分間で4リットルしか作れないため、1人あたり一日に使える量は170リットル。水不足となると渇水警報が鳴るそうだ。

さらに制約の3つ目は「ごみ」。35種類に分別し可燃物はドラム缶焼却し、生ごみは炭化装置で炭化させて焼却する。排水もBOD値(水質の汚れを表す指標)をクリアすることが必須とのこと。

1年間、この生活を経験した渡貫さんは、実は、帰国して1か月後、家族とスーパーマーケットに行って食品が調理して数時間後に廃棄される状況を見て思わず売り場で泣いてしまったそうだ。音や情報、物があふれている日々に違和感を感じる日々が続いたが、やがて「南極でやっていた調理を日本の生活に生かせばいいんだ」との思いに至り、野菜は根や皮を取り除く時には最低限にし、例えばピーマンは丸ごと使う。献立は、料理名から考えないで、食材から考えることにし、インターネットで調べる時にも「食材レシピ」にアクセス。さらに消費期限をのばすため、漬物にしたり、発酵させたり、干したりするという工夫もしているし、ひじきの煮物やお浸しなどが残った時に小麦粉と混ぜて「惣菜ケーク」を作るという徹底ぶり。

帰国して6年半「まだ元の自分には戻りきってない」とおっしゃっているが、私たちの生活もいつ何時厳しい状態が訪れるかわからないのだから、渡貫さんが極地南極で体験した“キャベツ1枚、水一滴を大切にする”という話に改めて耳を傾けていかなければならないと感じた。