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川の流れを活かす「小水力発電」から学ぶ

「日本一の小水力発電のまち」静岡県富士宮市


 

水が高い場所から低い場所へ流れる力を利用してタービンを回す「小水力発電」は、川や水路を利用し、小規模な設備で電気を生み出す発電方法です。大きなダムを必要とせず、自然環境への負荷が少なく、地球温暖化対策としても注目されています。

 

富士山の豊かな伏流水に恵まれた静岡県富士宮市では、地域の特性を活かして小水力発電を積極的に推進しています。出力1000kW以下の発電所の数・発電力ともに日本一となっています。

 

今年度、目黒区エコプラザで活動する「めぐろエコサポーター」を対象に、「めぐろECOJOY倶楽部」が企画・運営するステップアップ講座として、富士宮市の小水力発電所見学会を開催。スタッフを含め23名が現地を訪れました。

 

富士山の伏流水と地形を活かした発電の仕組み

酸素をたっぷり含んだ清らかな水でニジマスを育てています
酸素をたっぷり含んだ清らかな水でニジマスを育てています
左側が発電施設。2020年に稼働
左側が発電施設。2020年に稼働

 

見学の最初に訪れたのは「白糸滝養魚場」です。富士山の伏流水が流れる芝川の支流から水を引き込み、ニジマスを育てる施設です。池に水を引き込む際の落差を利用した小水力発電設備があり、上流の水門と連携して水量を調整することで、下流域の水害防止にも貢献しています。

 

次に訪れた「白糸発電所」は、1916年(大正5年)に運転を開始し、100年以上にわたり地域にエネルギー供給してきた歴史ある施設です。

 


上流の内野発電所で使用した水が芝川に戻され、再び下流で取水されて白糸発電所で発電に利用されます。流れの落差24.24m、約1300世帯分を発電しています

家康公用水発電所で発電された電気は、静岡銀行の9店舗で使用されています
家康公用水発電所で発電された電気は、静岡銀行の9店舗で使用されています

さらに「家康公用水発電所」では、徳川家康が築いた北山用水の流れを活用した発電が行われています。水車で発電した水を再び北山用水へ戻される仕組みです。

 

地元の静岡銀行が命名権を取得し、「しずぎんアクアエナジーパーク家康公用水発電所」として、小水力発電の仕組みを学べる場となっています。

 

参加したエコサポーターからは「国土の狭い日本に適した発電方法では」「全国に広がってほしい」といった感想が寄せられました。

 

再生可能エネルギーを選ぶということ

 

今回の見学会は、異常気象が頻発する今こそ、再生可能エネルギーの導入を加速し、温暖化対策に本気で取り組む必要があると考え、企画しました。実際に現地を訪れることで、流れる水があればどこでも発電が可能で、設備はコンパクト、自然破壊にもつながらないなど、多くの利点を実感できました。

 

9月11日の大雨では目黒川が氾濫危険水位を超え、家屋の床上・床下浸水などの被害が発生しました。都市部に暮らす私たちにできることのひとつは、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを選ぶことではないでしょうか。今回の見学を通じて、そんな気づきを得ることができました。

 


■めぐろECOJOY倶楽部

目黒区環境推進員第1期生の有志が立ち上げだ団体。大人も子どもも楽しく学べる体験型環境講座の企画・運営を手がけています。また、区内の農家の手伝いを通して、都市農業や都市農地の重要性を伝える活動もしています。

 

■目黒区エコプラザ https://www.meguro-ecoplaza.com/

エコライフめぐろ推進協会が指定管理者として管理運営。リサイクルショップの運営、資源回収に加え、環境について楽しく学習できるイベントや講座を開催しています。