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身近な生活の中にも生物多様性②

近頃、生物多様性が大切だ、大切だ、・・・とよく耳にしますが、

さて、そもそも生物多様性とはどのようなことでしょうか?

 

私たち人間も含む生き物は他の生き物と関わり、支えあい、つながることで、初めて生きていくことができます。個性豊かな多くの種類の生き物の存在とそのつながりが「生物多様性」といえます。水や空気はもちろん、食べる物や着る物の材料、木材や薬の原料など、「生物多様性」が保たれているからこそ得られる恵みのおかげで私たちは生きているのです。

「生物多様性」には生態系、種、遺伝子の3つのレベルの多様性があるとされています。

 

私たちの身近なくらしの中で、生き物とのつながりを感じることが大切です。

そこで、「生物多様性」の大切さを理解するために、「生態系」、「種」、「遺伝子」の3つのレベルの多様性について身近な例をとりあげ、クイズ形式で楽しめるようにしました。第2回は「種の多様性」についてのクイズです。

「種の多様性」クイズ

里山の風景

地球にはいろいろな種類の生きものがいます。長い時間をかけてさまざまな環境に適応し進化し、3,000万種ともいわれる多様な生きものが生まれました。

さて、次の「種の多様性」についての問1から問3の説明で、それぞれ正しいか誤っているか、もし誤っているならばどこが誤っているか考えてみましょう。

問1 

日本には古くから農業用のため池が各地に点在している。外来種の生きものが人の手によって持ち込まれても、そこは共存しながら、今も日本の在来種(固有種)の魚、動物、水生植物の宝庫である。

 

問2 

魚も種により他のいろいろな生きものをエサとして食べて育つ。イワシやサンマのように動物プランクトンを主食とする種もいれば、マグロやカツオのように他の魚を食べる種もいる。このような《食べる・食べられる》という一連の関係を食物連鎖といい、体が大きくなるほど大きな餌を食べる。

 

問3 

コケ(苔)は山や森の中だけではなく、都市でも多くの種が確認されている。アスファルトの上や街路樹の幹などいろいろな場所で見ることができ、土のない所でも生き抜くことができる。しかし乾燥に弱く1週間以上雨が降らないと枯れてしまう。

解答と解説

答1(誤り) ※赤字が正しい

アメリカザリガニ、ブルーギル、ウシガエル、ミシシッピーアカミミガメなどの外来種の生きものの影響により、在来種が食いつくされてしまい絶滅の危機にある。池などの半ば閉鎖された生態系は、一度外来種が侵入しその環境に適応すると一気に数が増えてその影響が広がってしまう。 

 

答2(正しい) 

一般的に食物連鎖の上位にいる生きものほど体が大きく、食べられる側

の生き物のサイズも大きくなる。また食べる側より食べられる側の数が多い。この食物連鎖ではイワシは動物プランクトンの上位だが、マグロはイワシのそのまた上である。マグロはイワシという間接的な段階を経て大量の動物プランクトンを摂取していることになる。

 

答3(誤り) ※赤字が正しい

コケは単純な体のつくりをしており、木や草の持つ維管束※さえない。雨や霧に含まれる水などを体の表面から直接吸収している。その結果コケの多くの種は長期間にわたって乾燥に耐えることができ、干からびても生命活動を最小限に抑えて、再び水を吸収すれば元通りみどりのコケに戻る。

※維菅束(いかんそく):植物の根、茎、葉を貫いている管の束で、根で吸収した水や水にとけた無機養分を運ぶ道管と、葉でできた養分を運ぶ師管からなる。

 

次回は「遺伝子の多様性」クイズです。おたのしみに!


参考出典:宮下 直「生物多様性のしくみを解く」工作舎・宮下 直「となりの生物多様性」工作舎・日本生態学会北海道地区編「生物学者、地球を行く」文一総合出版/環境省生物多様性ウェブサイト http://www.biodic.go.jp/biodiversity/index.html