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身近な生活の中にも生物多様性③「遺伝子の多様性」

近頃、生物多様性が大切だ、大切だ、・・・とよく耳にしますが、

さて、そもそも生物多様性とはどのようなことでしょうか?

 

私たち人間も含む生き物は他の生き物と関わり、支えあい、つながることで、初めて生きていくことができます。個性豊かな多くの種類の生き物の存在とそのつながりが「生物多様性」といえます。水や空気はもちろん、食べる物や着る物の材料、木材や薬の原料など、「生物多様性」が保たれているからこそ得られる恵みのおかげで私たちは生きているのです。

「生物多様性」には生態系、種、遺伝子の3つのレベルの多様性があるとされています。

 

私たちの身近なくらしの中で、生き物とのつながりを感じることが大切です。

そこで、「生物多様性」の大切さを理解するために、「生態系」、「種」、「遺伝子」の3つのレベルの多様性について身近な例をとりあげ、クイズ形式で楽しめるようにしました。第3回は「遺伝子の多様性」についてのクイズです。

「遺伝子の多様性」クイズ

地球にはいろいろな種類の生きものがいます。同じ種でも異なった遺伝子を持つことによって、形や模様、生態などに多様な個性がうまれます。

さて、次の「遺伝子の多様性」についての問1から問3の説明で、それぞれ正しいか誤っているか、もし誤っているならばどこが誤っているか考えてみましょう。

 

問題

問1 

バナナは本来種子植物で、原生種は小ぶりの実をつけ、中に黒い種が入っている。私たちが食べているバナナには種がないのは、食べやすいよう品種改良されたものである。

 

問2 

ゲンジボタル、ヘイケボタルに代表されるホタルのともす光は美しく神秘的で、私たちの心を癒してくれます。このホタルの光の点滅周期は、どの種類でも同じである。

 

問3 

19世紀半ばにアイルランドでおきた「小麦飢饉」。土地が痩せていても収穫できる小麦が疫病にかかり、食料源の被害のため、約800万人であった人口が、餓死や国を離れる人々で、約600万人にまで減った。

解答と解説

答1(正しい) 

バナナは現在株分けによる栽培が主流となり、種がないように品種改良した「キャベンディッシュ」という品種が90%以上を占めている。その結果同一遺伝子を持つものが多いため、特定の病原菌に弱いというリスクを抱える。

 

答2(誤り) ※赤字が正しい

ゲンジボタルは地域によって異なっている。オスがいっせいに周期を合わせて発光しているときに西日本では約2秒に1回、東日本では約4秒に1回発光する。その分布境界域はほぼ静岡―長野―新潟県を結ぶ地帯である。本州の水田環境に生息するヘイケボタルは、飛翔時に約0.5秒に1回明滅する。 このようにホタルの光の点滅周期は、生息地域や種によって異なる。

答3(誤り) ※赤字が正しい

19世紀半ばにアイルランドでおきたのは「ジャガイモ飢饉」。ジャガイモは種子ではなく、前年にとれたタネイモで栽培を繰り返す。当時は収穫量の多い単一の品種だけを育てていたので、海外から病原菌が侵入すると、食糧をジャガイモに依存する人々が壊滅的な被害にあった。遺伝的な多様性を欠いてしまった教訓である。


参考出典:宮下 直「となりの生物多様性」 工作舎・阿達 直樹 「昆虫の雑学事典」 日本実業出版社・山本 正「アイルランドの歴史」 河出書房新社